経口ポリオワクチン(OPV)は、ポリオウイルスの弱毒化Sabin株(1・2・3型)を用いた経口投与の弱毒生ワクチンである。アルバート・セービン博士が開発し、1960年代以降、世界的なポリオ根絶キャンペーンの主力ワクチンとして使用されてきた。 **日本におけるOPVの歴史:** 日本では1960年代のポリオ大流行を受けて、1961年にソ連・カナダからOPVを緊急輸入し、大規模な集団接種が実施された。この迅速な対応によりポリオの流行は劇的に抑制され、1981年以降、日本国内での野生型ポリオウイルスによる症例は報告されていない。 しかし、OPVにはワクチン関連麻痺性ポリオ(VAPP)というまれだが重篤な副反応があり(約440万接種に1例)、日本でも年間数例のVAPPが報告されていた。この問題を受けて、2012年9月に日本はOPVからIPV(不活化ポリオワクチン)への全面切替を実施した。 現在、日本ではOPVは使用されていない。本項目は、海外でOPVを接種された渡航者への情報提供、および世界的なポリオ根絶戦略の理解を目的として記載する。
経口ポリオワクチン(OPV)は、ポリオウイルスの弱毒化Sabin株(1・2・3型)を用いた経口投与の弱毒生ワクチンである。アルバート・セービン博士が開発し、1960年代以降、世界的なポリオ根絶キャンペーンの主力ワクチンとして使用されてきた。
日本におけるOPVの歴史: 日本では1960年代のポリオ大流行を受けて、1961年にソ連・カナダからOPVを緊急輸入し、大規模な集団接種が実施された。この迅速な対応によりポリオの流行は劇的に抑制され、1981年以降、日本国内での野生型ポリオウイルスによる症例は報告されていない。
しかし、OPVにはワクチン関連麻痺性ポリオ(VAPP)というまれだが重篤な副反応があり(約440万接種に1例)、日本でも年間数例のVAPPが報告されていた。この問題を受けて、2012年9月に日本はOPVからIPV(不活化ポリオワクチン)への全面切替を実施した。
現在、日本ではOPVは使用されていない。本項目は、海外でOPVを接種された渡航者への情報提供、および世界的なポリオ根絶戦略の理解を目的として記載する。
日本での現在の位置づけ:
日本ではOPVは2012年9月に使用中止。定期接種・任意接種ともに使用されない
IPV(不活化ポリオワクチン)が唯一のポリオワクチンとして使用されている
海外でのOPV使用状況:
低〜中所得国の多くでは、コスト・投与の簡便性・粘膜免疫の優位性からOPVが依然として使用されている
WHO GPEIの戦略:2016年に3価OPV(tOPV)から2価OPV(bOPV、1型+3型)に切替。2型OPVの使用中止は2型cVDPVの出現により複雑化
nOPV2(新規2型OPV):遺伝的安定性を向上させた改良型OPV2が2021年にWHO EULで承認
海外でOPVを接種された場合:
海外でOPV接種を受けた日本人帰国者のポリオワクチン歴は有効と認められる
OPVとIPVの混在接種歴も許容される
OPVの禁忌(参考情報、日本では使用中止):
免疫不全状態(VAPPのリスクが著しく上昇)
免疫不全者の家族・同居者(二次感染のリスク)
免疫抑制療法中
急性胃腸炎に罹患中の者
妊婦(理論的リスク。ただし流行地域では接種が行われる場合がある)
日本でOPVが中止された理由:
VAPP(ワクチン関連麻痺性ポリオ):弱毒化ウイルスが腸管内で変異し、神経毒性を回復することにより発症。頻度は約1/440万接種
ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV):ワクチン株が環境中で循環し、遺伝的変異を蓄積して病原性を回復する現象
先進国では野生型ポリオの国内伝播がないため、VAPPのリスクが受容できない
OPVの副反応(参考情報):
一般的:
下痢(軽度)
発熱(軽度)
ほとんどの場合、副反応は軽微または無症状
まれだが重篤:
VAPP(ワクチン関連麻痺性ポリオ): 約1/440万接種(初回投与で最も多い)。OPV接種後4〜30日以内に弛緩性麻痺が発症。永続的な麻痺を残す場合がある
VAPPは被接種者だけでなく、便中に排泄されたワクチンウイルスとの接触者(二次感染)にも発症しうる
cVDPV(ワクチン由来ポリオウイルス):
OPVのワクチン株が免疫率の低い集団で循環することにより、遺伝的変異を蓄積し病原性を回復する
2023年に世界で約700例のcVDPV症例が報告されている(大部分が2型)
日本でのOPV使用中止(2012年)は、VAPPリスクの排除を目的としたものであり、この決定は科学的に妥当であったと評価されている。
日本での現状:
OPVは日本では使用されない(2012年9月に全面廃止)
IPV(四種混合ワクチンDPT-IPVの一部として)が定期接種
海外でのOPV投与方法(参考):
経口投与(口腔内に2〜3滴)
投与が極めて簡便(注射不要、医療従事者以外でも投与可能)
コールドチェーンの要件はIPVより緩やか
OPVの種類:
tOPV(3価):1・2・3型全て含有。2016年に使用中止
bOPV(2価):1型・3型含有。現在も一部の国で使用中
mOPV2(1価2型):2型cVDPVアウトブレイク対応用
nOPV2(新規1価2型):遺伝的安定性を向上させた改良型。WHO EUL承認
費用: OPVは極めて安価(約0.10〜0.20 USD/dose)であり、低所得国での使用に適している。これがIPVへの完全移行の障壁の一つとなっている。
OPVの有効性(参考データ):
3回接種後の1型ポリオウイルスに対する抗体陽転率:約95%以上(先進国)
途上国では環境要因(他の腸管感染、栄養不良等)により有効率が低下する場合がある(約70〜90%)
OPV vs IPVの比較:
OPVの利点:粘膜免疫(腸管IgA)の誘導に優れる、経口投与で簡便、安価、接種者周囲への間接的免疫(二次免疫)
IPVの利点:VAPPリスクなし、免疫不全者にも安全、品質管理が容易
麻痺性ポリオの予防効果:OPV、IPVともに極めて高い
世界的なポリオ根絶の成果:
1988年のGPEI開始時:年間35万例
2023年:野生型ポリオ12例(パキスタン、アフガニスタンのみ)
2型野生株は1999年、3型は2019年に根絶宣言
日本のOPV大量接種(1961年)は、ポリオ流行を短期間で制圧した公衆衛生上の成功例として国際的に評価されている。その後のIPVへの切替(2012年)は、VAPPリスクの排除という次の段階への進化であった。
IPVとの関係:
OPVからIPVへの切替時期に、OPV接種歴のある小児にIPVを追加接種することは安全かつ有効
OPVとIPVの混在接種スケジュールは免疫学的に許容される
他のワクチンとの同時投与(参考、海外):
海外ではOPVはロタウイルスワクチン、BCG等と同時投与される場合がある
ロタウイルスワクチンとの同時投与による免疫干渉が一部報告されているが、臨床的に問題となるレベルではない
薬剤との相互作用:
日本ではOPVは使用されないため、相互作用の情報は海外での接種歴を持つ渡航者への参考情報として記載する。
Pregnancy: OPV (live attenuated) is generally not recommended during pregnancy in countries using IPV. However, the WHO states that OPV may be given to pregnant women during polio outbreaks or when traveling to endemic/epidemic areas, as the risk of polio disease outweighs theoretical vaccine risks. Decades of OPV use have not demonstrated adverse effects on the fetus. In endemic countries, OPV is part of routine supplementary immunization activities and is given regardless of pregnancy status.
Breastfeeding: OPV is compatible with breastfeeding. While maternal antibodies in breast milk may slightly reduce the infant's immune response to OPV, this effect is not considered clinically significant. The WHO recommends administering OPV to infants regardless of breastfeeding status. Breastfeeding women can receive OPV if indicated (e.g., during outbreak response campaigns). No interruption of breastfeeding is necessary for either the mother or the infant receiving OPV.
Pediatric use: OPV is a mainstay of the Global Polio Eradication Initiative. The WHO recommends a birth dose of OPV followed by doses at 6, 10, and 14 weeks, often with at least one dose of IPV. OPV provides both individual protection and community immunity through secondary spread of vaccine virus. The risk of vaccine-associated paralytic poliomyelitis (VAPP) is approximately 1 per 2.7 million first doses. Countries that have eliminated wild poliovirus have switched to IPV-only schedules. Novel OPV type 2 (nOPV2) has been developed with reduced risk of genetic reversion.
Older adults (≥65 years): OPV is not routinely used in older adults in countries using IPV. If an unvaccinated older adult is traveling to a polio-endemic area, IPV is the preferred vaccine. Adults who completed a primary series may receive a single lifetime IPV booster before travel. OPV should be avoided in immunocompromised elderly individuals due to the risk of vaccine-associated paralytic poliomyelitis (VAPP), which is higher in immunodeficient persons.
日本の渡航者への注意事項:
ポリオ流行国(パキスタン、アフガニスタン)およびcVDPV発生国への渡航前に、ポリオワクチン接種歴を確認
日本で定期接種(DPT-IPV 4回)を完了している場合は追加接種は通常不要
接種歴不明の場合はIPVの追加接種を検討
一部の国ではポリオワクチン接種証明が出国要件となる(IHR規定)
OPV接種後の注意(海外で接種を受けた場合):
OPV接種後は約4〜6週間、便中にワクチンウイルスが排泄される
免疫不全者との接触に注意し、手洗いを徹底する
乳児のおむつ交換後の手洗いを保護者に指導
世界のポリオ根絶戦略:
WHO GPEIは2030年までのポリオ根絶を目標
OPVの段階的廃止とIPVへの移行が最終目標
nOPV2(改良型)の導入によりcVDPV2のリスク低減を図っている
| 回目 | 前回からの日数 | 対象年齢 |
|---|---|---|
| 回目 1 | — | 0 ヶ月+ |
| 回目 1 | — | — |
| 回目 2 | 42d | 1 ヶ月+ |
| 回目 3 | 28d | — |
| 回目 4 | 28d | — |
必要なワクチンがわかりますか?素晴らしい。わからなくても大丈夫 — 渡航先を教えていただければ、適切なワクチンとクリニックをお探しします。無料、義務なし。
このページの内容は、情報提供および教育目的のみを目的としています。医学的な助言、診断、または治療の推奨を構成するものではありません。健康上の懸念がある場合は、資格のある医療専門家にご相談ください。Medovaは医療サービス提供者ではありません。
利用規約全文